モラル・ハラスメントの心理(文庫)

モラル・ハラスメントの心理(文庫)

子どもを情緒的に虐待しながら、子どもを愛していると信じ込んでいる親がいる。
彼らは、自分は子どもを愛している「愛の人」と思っているが、実はサディストである。
それはカレン・ホルナイのいうサディズム的愛である。
フロムのいう好意的サディストである。
そしてこれは親子関係ばかりでなく、夫婦関係でも同じことである。
職場にもいる。公の場にもいる。

彼らが持ち出してくる言葉は常に「あなたのため」というモラルである。
この「あなたのため」という言葉は相手の心を縛り、相手を支配するための言葉である。
それは相手の心にかける手錠である。
モラル・ハラスメントをする人は、自分の中のサディズム的衝動を満足させつつ、自分は聖人だと思っている。
モラル・ハラスメントをする人は、自分が「愛」と思い込んでいたのは、サディズムが変装した姿であると理解出来ない。
親にしろ、上司にしろ、夫にしろ、妻にしろ、実は自分が自分自身に絶望して相手を強迫的に理想の人間に変えようとしただけなのである。

分かりにくいのは彼らのサディズムが巧妙に弱さに変装している時である。
例えば「私さえ犠牲になればそれでよいのね」という言葉。
サディズムがサディズムとして表れた時には問題は明解である。
しかしサディズムがモラルに変装して現れた時には、問題は深刻である。
そして加害者にも、被害者にも、第三者にもそれと理解出来ない。[15/09/10]

本作は2013年6月に刊行された「モラル・ハラスメントの心理構造」を改題し、文庫化したものです。

出版社: 大和書房 (2015/9/12)
ISBN-10: 4479305572
ISBN-13: 978-4479305576

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