なぜあなたばかりつらい目にあうのか?

なぜあなたばかりつらい目にあうのか?

人生は、心の持ち方で辛くもなれば、楽しくもなる。

 その通りであろうが、そうは言ってもその心の持ち方を自由に変えられるものではない。

 辛いのは辛いし、楽しいものは楽しい。

 小さい頃から楽しいことが沢山あった人と、辛い体験だけであった人では、脳の中の神経回路が違っている。だから心の持ち方を自由に変えられるものではない。

 世の中には自立に向かって励まされ続けて成長してきた幸せな人と、ありのままの自分を否定され続けて生長してきた惨めな人とがいる。両者の運命は違う。だからと言って「どうしようもない」と片付けられていいものではない。

 ありのままの自分は生きる価値がないと破壊的メッセージを与えられ続けた人も必ず幸せになれる生き方はある。

 鳥がモグラの生き方をしてしまうと不安に陥る。不安は生き方が何処かおかしいという赤信号である。

 人が不安なときは何か自分に取って不自然なことをしているときである。そこに気づけば必ず幸せになれる生き方はある。

 神経症的傾向の強い人、悩んでいる人は、人間関係の距離感が分からない、相手が分からない、自分の立場が分からない等々色々と分かっていないことがある。それらの土台にあるのは「自分が分かっていない」と言うことである。

 自分が分かれば、自分のすることが分かる。そこで道が拓ける。

 オーストリアの精神科医ベラン・ウルフの言う様に悩みは昨日の出来事ではない。

 今の悩みは昨日までしてきてきたことの結果である。

 昨日までしてきてきたことが分かれば、これから自分のすることが分かる。そこで道が拓ける。

 総合して言えることは、悩んでいる人は人とのかかわり合いの中で生きていけない人である。自然なコミュニケーションが出来ない人である。

 自然なコミュニケーションの中で生きていけないから、適切な目的が持てなかった。

 その結果、間違った努力をするようになった。

 努力が報われない人がいる。それは努力が人と拘わりのない努力になっているからである。

 そこで「私は悪くない」と依怙地になる。相手を許さない。「私ばかり辛い目に遭う」と言い張る。

 世界はどんどん狭くなる。

 この本は、そういう人が、自分のベストに気がつき、自分の潜在的能力を開発するための本である。新しい世界を拓くための本である。

 筋としては次の様な流れである。

1章 だから努力は報われない。

2章 報われない努力の動機は、人の好意を求めること。報われない努力の原因は自分。

3章 努力が報われない人の性格的特徴としては、ナルシシスト、タイプAの人、恥ずかしがり屋、自己中心性、神経症者等々、皆人とのかかわり合いの中で生きていない。

4章 人とのかかわり合いの中で生きていけない人が分かっていないことを具体的に言うと、人間関係の距離感、相手の気持ちなど。

 なぜあなたは理解されないか?

 なぜあなたはいつも人間関係に怒っているのか?

 自分が分かれば人間関係はうまくいく。

 なぜ「誰も私のことを分かってくれない」と悩むのか。

 それは自分を分かっていないから。

 「誰も私のことを分かってくれない」症候群。
 すねているだけ。だから体の調子が悪い。
 不幸の原因は、自分が分からなくてコミュニケーション出来ないことと、人生を安易に考えて居ることである。
 これで社会の中で生きていけば、人間関係のトラブルが絶えない。
 そして「私ばかり辛い目に遭う」となる。

 自然なコミュニケーションが出来ていない中での努力は実らない。

 これらの人は心の通路が狭い。

 「心が狭いと困難に屈服してしまいます」「註、David Seabury, How to Worry Successfully,

Blue Ribbon Books: New York, 1936, 加藤諦三訳、心の悩みがとれる、三笠書房、1983年2月10日、210頁。」

 悩んでいる人はとにかく要求が多い。周囲の人に対する要求がもの凄い。受け身的願望がもの凄い。受け身的願望とは簡単に言えば「甘え」である。だからいつも不満。

 親はこれをしてくれなかった、友達はあれをしてくれなかった、先生はそれをしてくれなかったと、してくれないことを延々と訴える。

 甘えの欲求が被害者意識となって表現される。

 そしてこの被害者意識に悩まされる人は、「俺のことを大切にしない」「私のことを分かってくれない」「皆で私をいじめる」「僕だけが損をする」等々。

 「私は悪くない」、「私ばかり辛い目に遭う」という人達は、周囲の人がいかに酷いかを延々と訴える。そして自分だけは、その被害者になり、立派な人になる。

 犠牲的役割によって、傷ついたナルシシズムを防衛しているのである。

 犠牲的役割にしがみつくことで、心の傷を癒そうとするから、最後はどうにも出来なくなる。

 そして この「追い込まれた」という感覚が、憎しみの反応を引き出す。「註、Push W. Dozier, JR. , Why We Hate. A Division of The McGrown-Hill Companies,21」。

 無力感と憎しみが深く関係する。

 「この状態をどうすることも出来ない」と感じたときに憎しみの感情はもの凄くなる。

 「こんなに辛い」と訴えているのは、周囲の誰かに対する憎しみを表現している。

 人生はチャンスに満ちているにもかかわらず、この憎しみの感情で、チャンスを逃す。

 「私は悪くない」と言っている間に、せっかくの魅力を失ってしまう。

 だから「私ばかり辛い目に遭う」と言っている間に、自分の潜在的能力を解き放す。

出版社: 朝日新聞出版 (2019/1/11)
ISBN-10: 4022950021
ISBN-13: 978-4022950024

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