アメリカ・インディアンの子供の世界には苛めがない。

1990年の秋、ハーヴァード大学のワイドナー図書館である。ハーヴァード大学には90前後の図書館があるが、その中でもワイドナー図書館は最も大きいもので、世界の大学図書館で最高最大と言われている。
 
その本の名は[What The White Race May Learn From The Indian]と言うものである。正確に訳せば「白人はインディアンから何を学んだらいいか」と言う古い本を大学の図書館で見つけた。1908年の出版である。
 
著者はジョージ・オートン・ジャームスという心理学者で、長年にわたってインディアンと生活を共にした人である。
 
彼はアメリカ・インディアンの子供の社会では上の子が下の子を酷く扱うのを25年間見たことがないという。
 
ホピ族の家が崖の縁に建っている。そこから落ちれば確実に死ぬというところである。ところが小さな子供は自由にそこで遊んでいる。それは上の子がいつも下の子を見守っているからである。そして事故を見たことがないという。「156頁」。
 
そしてこのことは若い人が年寄りを敬うことの習慣に繋がっていく。年をとった男性が「とうもろこし」畑に行くのに孫を背負って行くのをしばしば見かける。そして孫はおじーちゃんの背中を絶対の愛情と安心でしがみついている。「おじーちゃんの背中を絶対の愛情と安心でしがみついている」、これ以上の幸福が孫にとってあろうか。どのような財産も、名誉も、これ以上のものを子供に与えることは出来ない。
 
そしてこうした体験さえあれば子供はこれからの長い人生を力強く生きて行かれるだろう。
 
インディアンの子供にはいらいらした気難しさがないという。わめいたり、大きな声で叫んだり、弱いもの苛めをしたり、臆病に支配することもない。

There seems to be none of that ipatient petulance among Indian children that is so common with us; no yelling or loud shouting, and certainly no bullying or cowardly domineering.

アメリカ・インディアンには苛めがない、そして日本語で言うところの「弱者の恐喝」と言われるようなものがないと言う。自分の不幸を強調して、人を支配しようとすることがない。それは交流分析でいう がないということにも通じるであろう。
 
こういうことを読むとフロイドが文明の代償は不幸だといっていたことを思い出す。おそらくインディアンの子供は満足しているのだろう。だから苛める心理的必要もないし、弱者の立場を強調して人を支配する心理的必要もない。
 
こうしたことを読むと私達はどこで生き方を間違えてしまったのだろうと思う。