「母なるもの」を持たない母親は、言葉のなかに含まれている五感を子供に教えていない(2)

心の教育について第7回目で、謝ることを教えるのが心の教育ではなく、謝るに至る心の過程を教えるのが心の教育であると書く予定であるが、もう一つの心の教育は親子の一体感ではないだろうか。家への帰属意識で子供の心は育つ。その家への帰属意識は家の仕事を手伝うことで生まれるのではないだろうか。一体感、帰属意識は目的が共通であることで生まれる。協力で生まれる。
 
手伝うという事はかかわることである。畳を変える、年の暮れには障子を張り替える。季節の模様替えがあった。季節感と手伝いとがあった。今の教育には関わりの中での教えがない。一緒の料理をする中で親が子供に何かを教えるということがなくなった。
 
かかわることで、そこに自分という存在が生まれる。それが心の教育である。そこで家に愛着を持つ。家の何かにかかわることで、家に心が通い合う。
 
親子で一緒に食事の用意をすることも少なくなった。そこでその家の文化の伝承もなくなった。わが家の味噌汁はもうとうの昔になくなった。それぞれの家の秋の行事も夏の行事もなくなった。
 
夏になって「今日ソーメンにしようか」という会話が親子でなくなってきた。冬になって「今日、おでんにしようね」という会話がなくなった。春には木の芽の天ぷらを揚げることも少なくなった。
 
冷凍食品などの加工品を止めようというのではない。今の時代季節感もなくなったが、くつろぎの食事がなくなった。