子供はどうしてナルシシズムを消化して成長していくのか。

現代人はナルシシストだという。ナルシシストの親は子供達の可愛い顔には感動しないが、鏡に映る自分の姿にはうっとりとする。ナルシシストは飽きることなく自分の話をするが、他人の話はすぐに飽きる。人にも犬にも料理にも、もちろん数学にも音楽にも外界には一切関心ない。ただ関心は自分のイメージだけ。
 
では子供はどうしてナルシシズムを消化して成長していくのか。それは、誰かが心から「まー、○○ちゃん、素敵ねー」と言ってくれるからである。子供は「まー、○○ちゃん、素敵ねー」と言ってくれた人に関心を持つから、外界に興味を持つ。
 
褒めるといっても「お上手ねー、えー、いいわ、ハイ、ハイ」と言いながら、床のごみを拾っている母親がいる。これではいくら褒めても子供のナルシシズムは満足され消化されない。子供は床のごみを拾っている母親を見ている。
 
また「あなたは、私にとって大事な人」と言いながら空を見ている母親もいる。「おまえは、いい子だね」と言いながら自分のシャツを直している父親もいる。
 
それにたいして「ワー、お上手、お上手!」と我を忘れて必死で手をたたく母親がいる。この場合には子供のナルシシズムは満足され、消化されていく。
 
親は毎日子供を皮膚感覚で見ていなければ子供のナルシシズムを満足させることはできない。そしてただ真剣に褒めればいいというのではない。何を褒めるかを間違ってはいけない。
 
子供が何かを達成したときに褒めることが大切である。アメリカのABC放送を見ていたときである。小さな子供が一生懸命靴紐を結ぼうとしている。なかなかうまく結べない。そしてやっとうまく結べた。そのときの子供の嬉しそうな笑顔。まさに達成の喜びを表わしていた。もし親がそのそばにいたら、こういうときこそ褒めることが大切である。達成の喜びと褒められることの喜びが一緒になって子供はもっと前向きの意欲を沸かすだろう。
 
犬は自分の子供をなめる。子供は気持ちがいい。安らぐ。赤子は肌のふれあいから自分以外の世界を知る。この世界は自分一人では感じられないことを赤子は感じる。
 
嬉しい、楽しい、悲しい、怒り、それも人と一緒にいるから。人は一人では成長しない。赤子が外界を知るのは感覚から。今の親は皮膚感覚で子供を育てることを忘れている。