子供が「おかーさんのウソつき」と言った。

子供は母親が約束した玩具をいつ買ってくれるか楽しみにしていた。しかしなかなか買ってくれない。そこでしびれを切らして子供が「おかーさんのウソつき」と言った。すると母親は「そんなことないでしょ、おかーさん、いつウソをついた?」と聞き返した。この母親は「子供の言葉をその通りに解釈をする母親」である。
 
子供は「おかーさんのウソつき」と言う言葉で「おかーさんはいつもこうして僕のことを安易に始末するんだから」と言っているのである。「おかーさんはいつもこうして僕のことを忘れるんだから」と言う意味で「おかーさんのウソつき」と言っているのである。
 
子供は玩具そのものも欲しいかも知れないが、それ以上に玩具を買ってくれるという母親の愛情が欲しいのである。玩具をいつまでも買わないと言うことで子供はその愛情への疑問を感じて怒っている。だからいつまでも約束を守らないと言うことで「こうしていつも僕のことを軽く見るんだ」と怒っているのである。子供は玩具が嬉しい以上に、玩具を買ってくれるという母親の気持ちが嬉しいのである。
 
だから「ゴメン、ゴメン、忘れてなんかいないわよ、どうしたら許してくれる?」と子供を抱きながら言えば、子供の怒りの感情は解決する。母親が忘れていないと言うことが分かれば子供の気持ちは収まる。「玩具が欲しい」と子供が言うと、子供は玩具が欲しいと思う母親がいる。恐ろしいほど子供の気持ちをくみ取らない。子供が「これが欲しい」と言ったときには、単に「これが欲しい」という意味ではない。母親は子供の要求の真の意味を理解することが大切である。
 
ある子供が「おかあさん、その爪の色嫌い」と言った。すると「うちの子はこの色が嫌いなんですよ」と言った母親がいる。子供はその色が嫌いと言っているのではない。その爪の色を見ると自分の母親ではないような気がすると言っているのである。「その爪の色をした母親が嫌い」と言っているのである。「私のおかあさんに戻って」と言っているのである。
 
家庭内暴力の子供に「なんで俺をこんな人間に教育した」と詰め寄られて教育論を始める母親がいる。その家庭内暴力の子供は「俺はどうして生きていいかもう分からない、助けてくれー」と悲鳴を上げているのである。