「良い子」は自分でない自分で生きようとしている。

「良い子」は好かれたい、愛されたい、褒められたいから自分の本性を裏切る。像には蝶々の羽がはえていない。 樫の木に突然ザクロは生らない。「註、Beran Wolfe, How to Be Happy Tough Human, 周郷 博 訳、どうしたら幸福になれるか、上巻、岩波書店、1960年、31頁」。  それなのに「良い子」は自分でない自分で生きようとしている。「良い子」は本当は像なのに蝶の様な真似をして 生きている。そうなれば生きている実感はない。  従って 「良い子」は家という感覚がなくて家にる。親と言う感覚がなくて親と接している。カステラという感覚 がなくてカステラを食べている。友達という感覚がなくて友達とつきあっている。「良い子」は透明人間のようなも のである。友達であれ、誰であれ、人とのつきあいに心がないということである。先輩という感覚がなくて先輩とつ きあっている。そのポストに来る人は誰でも同じ人間と感じている。  フロイデンバーガーの「燃え尽き症候群」と言う著作に神経症になった専務の例が出ている。  燃え尽き症候群のポール副社長は若い頃に音楽が好きだった。しかし彼の父親は音楽などホモのやることだと言う 。音楽など軟弱な青年のやることだと言う価値感を持っていた。  ポール少年はバイオリンが好きであったがそれを抑圧する。つまりバイオリンを好きだと言う感じ方を意識から追 放した。バイオリンが好きでは大切な父親に愛されないからである。  彼は父親に愛されるために自分はバイオリンが好きではないと思い込む。そして勉強 して立派な人間になるんだという「父の教え」に従う。  そして最後は燃え尽きる。