他人の期待をかなえることが自分の人生の意味になってしまった人。

従順な「良い子」は、自分が知らない恐い動物に囲まれているように感じて生きている。そこで他人の欲求に敏感 になる。他人の期待に答えようとする。
 
他人の期待をかなえることが自分の人生の意味になってしまった人は自分の欲求を明確にすることができない。他 人の期待をかなえるために「山登りが好きです!」と言うが、実は山登りは好きではない。
 
やがて「自分は何がしたいか」ではなく「相手は何を期待しているか」をかぎ分けるようになる。やがて自分も他 人も嫌いになる。他人の期待に答えるためにしている事がすべて嫌いになる。
 
「良い子」が富士山に登ったとする。しかし本当に登りたいのは富士山ではない。だから山に登っても登っても、 登ったという実感がない。つまり「良い子」は努力をしても努力をしても生きているというという実感がない。

自分自らの喜びの体験より、 他人からの是認のほうをいつも選んできた人はついには喜びの体験そのものができなくなるとマスロ-は言っているがその通りであろう。
 
「良い子」は小さい頃から親の七色の感情に合わせて生きてきた。カメレオンみたいにそのときそのときの相手の 感情にあわせて生きてきた。フロムの言う同調主義者である。自分がない。
 
自分が感じるように感じることが恐い。悲しいと感じれば喜ばれる時には悲しいと感じ、嬉しいと感じれば喜ばれ る時には嬉しいと感じなければならないからである。「良い子」は相手が期待するように感じようとする。「良い子 」はここではこのように感じるものと決め込んでいる。その様な親に従順に忠誠を誓っている「良い子」はいきいき とした感情を失う。