子供が母親を恐れている時

怒りを抑えている「良い子」はおびえている人でもある。その人から愛情を求めていながら、その愛情を得られるかどうかに自信がない。これが「子供が母親を恐れている」という心理状態である。
 
母親の愛を求めながらも、母親の愛を確信できないときに、子供は母親を恐れる。母親におびえる。母親の顔色を
伺う。
 
つまり母親の顔色を伺う子供は母親を信じていない。自分を抑えて「良い子」になっている子供の問題はそこである。
 
「良い子」は母親を信じていない。
 
人を信じられないから、「良い子」は後に大人になってさまざまな心理的問題を引き起こすのである。
 
母親の愛を信じている子供はいつも母親がにこにこしていることを求めていない。そうであるほうがいいが、それでなければ生きていけないほどそれを求めている訳ではない。母親の愛を信じていない子供に比べて、辛くはない。
 
しかし愛を信じられない子供は母親がいつもにこにこしていることを求める。母親がいつもにこにこしていなければ、不安で辛い。
 
それは母親が怒っていると自分は愛されていないのではないかという恐怖をもつからである。
 
自分が愛を求めている人が怒っている状態というのは、求めている側の人にとっては辛い。その辛さを避けたいので、その辛さが嫌なので、いつもにこにこしていることを求めるのである。
 
そして親にいつも機嫌良くしていてもらいたいから、自分は無理をして「良い子」になる。

しかし無理をして「良い子」になっても、求めている愛が得られない。そこでそ親に怒りを向ける。

相手が自分の切実な要求を通さないから相手に怒るのである。
 
無理をして「良い子」になっている子供は、親が自分を愛してくれるかどうかが不安で、親の言動におびえる。そして同時に親が自分の要求を満たしてくれなければ怒る。
 
これが家庭内暴力の子供である。「良い子」がある日突然暴力を振るい出す。
 
相手を信じている人は、相手の言動におびえない。怒りを抑えていない。だから突然暴力を振るい出すこともない。