[年頭所感] 2018年

明けましておめでとうございます

 年頭に当たり皆様のご多幸を祈っております。

 世界は複雑化しているのに、認識の仕方が単純化しています。
 例えばトランプ登場以来、メディアは、アメリカ社会の分断、世界の分断と、分断を叫びますが、今までのようにイデオロギーの分断、富める者と貧しい者との分断という解釈では解決できないようです。事実を見れば明らかです。
 ではなんの分断か?
 それは成長欲求に従おうとする者と退行欲求に固着する者との分断です。つまり心理的に言えば、ヒューマニズムとナルシシズムの分断です。
 これは既存のカテゴリーによって解釈出来る分断ではありません。今の世界は政治的な解釈だけで、分析しきれるものではないでしょう。
 今まではヒューマニズムとナルシシズムとの戦いでかろうじてヒューマニズムが勝ってきました。

 ところが現代は、どこへ行って良いかわからない。人類は行先を見失っている。
 行き先がわからないと何が起きるか。それはアメリカ・ファーストに見られるように「◯◯ファースト」です。
 今まではアメリカ独立宣言をスタートに自由、人権があった。ヒューマニズムという目標があった。
 E U の統合までは行先が見えていた。
 ただ同じ時代に、すでに生の引き潮の予兆があった。それを予告していたのがダニエル・ベルの「イデオロギーの終焉」、デービット・リースマンの「なんのための豊かさ」等などである。
 そして混迷する時代に対処するには、心のメカニズム、人間性の理解が今まで以上に必要になった。
 フロイドの指摘を待つまでもなく、人間は自分が思っているよりも、神に近く、同時に悪魔に近い。

 今は生の引き潮である。かつて事実としては人種差別は今よりもひどかった。ただ満ち潮だから、障害を乗り越える力があった。生の満ち潮だから、海底から姿を現して居ない。満ち潮のときには海底の岩石を飲み込む。
 逆に引き潮になると意識と無意識の乖離が激しくなる。全てが乗り越え不可能に感じる。
 新年にあたり、次の時代を切り開く新共同体論をかく思想家が現れることを願っています。それはフロイドやマルクス等を超える人だと思います。そしてそれを理解したリンカーンのような政治家が現れ、世界を回す時代が必ずくると思っています。

2018年 元旦
加藤諦三