農夫と海

農夫が、海の上で波にもまれて水のそこに沈んでいく船を見ながら、涙をながして海の悪口をいいました。すると海は農夫にむかってこうさけびました。
 
「なんだってあなたはわけも知らずに私を責めるのです。私があぶないめにあわせたのではありません。私をかきみだしている風が悪いのです。こんな風がないときに海の上をとおれば、私のほうが陸よりもおとなしいことがわかります。」

人間、何につけてもそれぞれ言い分があるのだろう。何かをして失敗する。そして人は失敗した人を責めるときがある。どんなに責められている人でもおそらくその人なりの言い分はあるのだろう。
 
また離婚のように争いがあるときには両方に言い分があるのだろう。でも私たちは当事者の場合にはやはり相手を責める。離婚をするときに浮気をした配偶者に「あなたは酷い」と片方が言う。しかしおそらく言われたほうは「あなたとでなければ普通の人よりも素晴しい人になれるのよ」と言う海と風のような言い分があるかもしれない。「私を酷い女にしたのはあなただ」という言い分である。
 
「私を騙した男達が私をこんな女にした」と言うのもよく聞く台詞である。