4. 親に演技する“よい子”(「ねばり」と「もろさ」の心理学)

『「ねばり」と「もろさ」の心理学―逆境に強い人、弱い人』より

大人になってから挫折するいわゆる「よい子」は、絶望感を心の底に宿しているのかも知れない。権威主義的で、支配的な親から逃げることが出来ず、生きることに失敗したのである。従順であることが唯一親の注目を獲得する手段ではあるが、それとても時に無視される。

従順であることが時に親の自分に対する態度を変えることがある。しかしそれも必ずしもというのではない。自分を殺すことによってしか、不快な環境を逃れることが出来ないと知れば、やはり絶望するのではないだろうか。我執の親は子供にとって電撃と同じ様に不快な刺激である。

自分を殺して親の御機嫌をとった時だけ、親の自分に対する態度を変えることが出来る。この様なことを学んでしまったらやはり絶望するであろう。欲求不満で、我執の親は子供にとって恐怖である。自分が言いたいことではなく、親が喜びそうなことを言う、自分がしたいことではなく、親が喜びそうなことをする。

これは親に対する自分の反応は親を変えることは出来ないと学ぶのとほぼ同じことである。つまり自分を殺す時だけ、親を自分にとって好ましい存在に変えることが出来るということである。それ以外親はいつも不機嫌である。

我執の親の不機嫌に接して生きることは、子供にとって犬がハンモックに紐で結び付けられて電撃を受けるのと同じ様に不快である。

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