46. 相手に天使を求める人は、自分のエゴイズムを満足させようとしているにすぎない

私の知っている優しく、暖かい女性が神経症者と結婚した。相手がいけなかった。ひどい神経症者である。自分にとって都合のいい「あるべき理想の妻像」を掲げて、妻にヒステリックに追った。神経症者がするあの非現実的な要求である。居丈高に物凄い勢いでその自己中心的で、しかも非現実的な要求をする。妻の箸の上げ下ろしで傷つき、騷ぎ立てる。神経症者というのは何にでも傷ついてしまう。
 
そこであっさりと自分には出来ませんと妻が言えば、離婚になっていたであろう。離婚をしたくなかった彼女は、必死で彼が要求する非現実的な「あるべき理想の妻像」を演じた。やがて彼女の内面はぼろぼろになった。彼女は自分を見失った。自分を見失えば優しさも暖かさも消える。
 
「あなたが天使に生まれついていないからといってあなたを咎めるような教えは、何であれ悪意のある出鱈目です」(シーベリー)。彼女はこの悪意のある出鱈目にしたがってしまったのである。
 
神経症者が断じて認めないのはシーベリーの次の言葉である。「天使など、あなたの隣人達の中にもいないことを覚えておいてください。私たちはみんな人間なのです」。神経症者は自分のエゴイズムの満足のために相手に天使であることを強く要求する。そして相手を滅ぼす。彼のエゴイズムとナルシシズムが冷たく憔悴した奥さんとなって返ってきたのである。

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