6. 偽りの自分を他人に演じるな (「ねばり」と「もろさ」の心理学)

『「ねばり」と「もろさ」の心理学―逆境に強い人、弱い人』より

自分で自分を決めつける人はまた他人のことも決めつける傾向がある。神経症的な人は相手を決めつける。あなたは幸せだ、あなたは友達に恵まれている、あなたは強いから傷つかない、あなたはこれが好きだ、あなたはあれが嫌いだ、あなたは親切な人だ、あなたは苦労していない等等決めつける。

今度は逆に相手がつくるイメージに自分を合わせる人がいる。相手がつくるイメージに縛られる。相手が理想のイメージを押しつけて来る。するとそのイメージに合わせて行動しようとする。そのイメージに自分を合わせて演技しようとする。ランガー教授の言うmindlessnessに相手の言うことを受け入れる人である。

シーベリーが言うところの「悩む人」というのがこのタイプである。「私はそういう人間ではありません」と言えないから悩むのだとシーベリーは言う。そしてこれを言えないのが執着性格であり、メランコリー気質であり、循環気質なのではなかろうか。なぜならこの種の人は他人の期待に応えることが人生の目標になってしまっているからである。

あなたは優しい人だ、あなたは力がある、などと決めつけられるとそれを演じようとする。「そんなことはありません」とはなかなか言えない。「あなたは強い人だ」と言われると、「そんなことはない、私だってあなたと同じに傷つきます」と言えずに、傷つかない強い人間を演じようとする。

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