67. 幼児性と思いやりの境界線(『自分に気づく心理学』)

『自分に気づく心理学』より

情緒的に未成熟な大人は、近くの人を気にいったり、嫌ったり、好きになったり、面自くないと反発したり、好意を持ったり、敵意を持ったりする。「ほっておく」ということがどうしてもできない。
 
さきに「そこにいるがゆえに」不満なのではなく、その人の心の中に間題があるがゆえに不満になっている人はほっておくほうがよいと書いたが、困ったことに気持のうえでぼっておけないというのが幼児性を残した大人である。
 
従って、自分の気持がそのようにして近くの他人にからんでいってしまう人は、まず自らの幼児性を反省することである。それを反省しないで、親切だとが、そういうことは冷たいとか、友情だとか、愛情だとか、いろいろの言葉を使って、自分の気持が相手にからんでいくことを正当化すると、いつになっても心理的に成長することはできない。
 
自分の気持が相手にからんでいってしまうことを「思いやり」というような言葉で正当化していると、いつになっても思いやりのある人間にはなれない。
 
思いやりをもつためにはまず相手を理解しなければならないであろう。しかし自分の気持が相手にからんでいく時は、決して相手を理解しようというのではなく、自分の思うように相手の気持を支配しようということにしかすぎない。

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