今日のことは今日のうちに整理するのがいい。

アメリカの小さな格言集を訳したことがある。そこに「蜜でねばねばしているハチミツの瓶は良く拭いてから棚に戻すこと」と言うのがあった。それを読んでこれは子供を育てるときにも言えることだなと思った。ハチミツの瓶をねばねばしたまま棚の元の場所に戻してはならない。その通りである。子供も気持ちをすっきりさせてから元の場所に戻さなければならない。
 
子供が学校から帰ってくる。顔を見るとふてくされている。何かあると母親は感じる。母親が「どうしたの?」と聞く。「べつに、何もないよ」と子供は答える。そんなときに心ない母親は「そー、それならいいけど」と言ってしまう。
 
心ある母親はしばらくしてから、子供を好きな食べ物で誘う。例えば「カステラたべる?」と誘う。おそらく子供は「うん、」となる。食べながら「なんかあったの?」と母親が聞くと子供はぼそぼそと話し出す。
 
或いは最も心ある母親は帰ってきた子供に「どうしたの?」とさえ聞かない。顔を見ただけで「これは何かあった」と確信するからである。そこで最初から「美味しいおやつあるわよ」という。
 
先生と何かあっても、友達と何かあっても、母親に全て話すことで、子供の悩みは感情的に消化される。ねばねばしている子供の心は良く拭かれて、翌日も学校に行ける。家にいる母親は子供が学校に行く前に子供の感情を整理してあげることなのである。整理して、すっきりさせて学校に戻す。
 
ただ「子供の話を聞くこと」というと今の母親の中には尋問を始めてしまう母親がいる。母親が不安だからである。聞くと言うことは尋問すると言うことではない。「子供の話を聞く」ということは子供を理解すると言うことである。「ケーキ食べる?」「お茶飲む?」が聞くと言うことである。そして子供の心の底に沈殿したものを上にあげてあげることである。
 
今日のことは今日のうちに整理するのがいい。しかし今日出来なければ今月中に、今月出来なければ今年中に、すっきりとすることである。そして子供の感情を元のようにすっきりとさせる。そうすればそこに夢が涌いてくる。べとべとしたままで蜂蜜の瓶を元に戻してたら、今度瓶を取り出すときにほこりを被って瓶はどうなっているか。