「勉強しなさい!」とお説教する変わりに夕食のおかずを一品多く

アメリカで薬よりも栄養による心理療法が新しい心理療法として模索されている。栄養のバランスを考えることでさまざまな心理的な問題を解決しようとするというものである。それを専門とする人々によればその治療の成功率は伝統的な心理療法よりも高いと言う。昨年アメリカで25年以上医療ジャーナリストとして活躍している女性がその種の研究をまとめたような著書を出版している(注、Pat Lazarus, Healing the Mind the Natural Way, A Jeremy P. Tarcher/Putnam Book,1995.」。
 
それに依ると砂糖は特に悪玉のようである。たしかに「シュガー・ブルー」と言う言葉がある。お砂糖を食べたためにブルーな気分になるということである。この方面のことをしているあるお医者さんは砂糖を「怒りの食べ物」と呼んでいる。先の本にも十年間で七回も刑務所に入れられた男が二ポンドの水さしに一杯のお砂糖を入れていた話しが出ている。そしてこれだけが俺を元気にしてくれると言ったと言う。砂糖についてはなにもこの新しい分野の人ばかりではなく、多くの人が子供への悪影響を説いている。それなのにビールを飲むと不良でも、お砂糖を食べても「良い子」になれる。
 
すでにこの新しい研究分野ではいろいろの書物が出版されているが、今後どのように認知されていくかはまだ少し時間を必要とするだろう。だが、いずれにしても栄養が肉体ばかりではなく脳を通して心理にも影響があるということはこの分野の人以外も認めている。つまりバランスのとれた食事の重要性は一応殆どの人が認めている。
 
だから、子供の心理問題に悩む親は子供に「勉強しなさい!」とお説教する変わりに夕食のおかずを一品多くすることに努力することである。また子供に勉強しなさいという前に自分が少しは栄養のことを勉強することである。そうすれば子供のおかずをどうしたほうがいいか、またどう言うときにはどういうものを食べさせるのがいいかは分かってくる。
 
「牛肉より魚がいい」というような単純ことではなく、子供が今日疲れているか、今日は夜は塾があるのか、今日は夕食の後すぐに寝てもいいのか、栄養についての知識があれば、それらのことを考えて作る料理が変わってくるはずである。それをしないで何が「少なく生んで大切に育てる」だ。四人とか五人の子供の世話をしているならまだしも、一人や二人の子供を育てるのにその位の注意をしてもいいだろう。
 
私は苛めたり、苛められたりする少年達の栄養状態を調べたら、もしかしたらもっと色々のことが分かってくるかもしれないと思っている。苛めたり、苛められたりした体験のない子供との毎日の食事の比較である。