14. 自己防衛的なつき合いからは友情や愛情は育たない(『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』)

『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』より

真の友人とか恋人の前では、人間は防衛的にならなくてよい。逆に言えば、防衛的にならなくてよい人が、友人であり恋人であろう。

防衛的になってしまうのは、相手に原因があるのか、自分に原因があるのか、どちらかであろう。自分に人を信じる能力がないのか、あるいは相手が心の底に敵意を抑圧しているのか、どちらかであろう。

自分に人を信じる能力がなければ、相手が自分を愛していても、その愛を信じることができない。そこで相手の前で、はじめの頃は自分をよく見せようとしてしまう。自分の弱点を相手に隠そうとする。相手が自分の弱点を非難するのではないか、相手は自分の欠点に失望するのではないか、それらのことを恐れて、その人は防衛的になってしまう。

相手は自分の欠点をも含めて自分を愛してくれているのだ、ということに、神経症的な人は気がつかない。いや、頭で分かっても、それを信じることができない。相手は自分の弱点を知っても、実際には自分に失望し自分を見捨てていくことはない。それなのに、自分の弱点を知ったら、自分に失望し自分を見捨てるのではないか、と不安になって防衛的になってしまう。(中略)