16. 愛を求めても愛されない人(『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』)

『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』より

「信じること」「信頼すること」というのは、自分を相手に向かって投げ出していくことである。我執の人、つまり不安な人は、信じよう、信頼しようとしても、どうしても自分が残ってしまう。「信じる」ということ、「信頼する」ということは、自分を無にすることなのに、不安な人はどうしても自分が残ってしまう。心が無防備にならなければ、相手を信じることはできない。

自我防衛的な人は、せっかく自分が好きになってくれた人がいても、しつこくそれを確認しようとして、結果としてその人が自分を嫌いになるように追い込んでいってしまうということがよくある。相手の好意を確認しようとすることは、相手を傷つけることだということに、不安な人は気がついていない。

また、不安な人、我執の人、神経症的な人、ナルシスト、心の不健康な人、幼児性を残している人、情緒未成熟者、それらの人々は、相手をいかに愛しているかということを表現するのに、自分はこんな犠牲を払ったということを言いがちである。また、自分は「こんなに好きだ」ということを通して、相手の愛情を要求する。

これらは、その人がまだ能動的になっていないこと、愛する能力を持っていないことをあらわしているにすぎない。