18. 虚勢を張っている人は嫌われる(『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』)

『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』より

嫌われる人というのは、心の底で自信がないのに自信がある「ふり」をする人だと言われる。一口で言えば、虚勢を張って生きている人であろう。虚勢を張る人というのは、まだ子供の頃の甘えの欲求が満たされていない人なのである。他人の注目を集めたくてしかたのない人であり、他人から特別に扱ってもらいたくてしかたのない人なのである。

虚勢を張っている人が成長するのに本当に必要な人というのは、「あなたはそんなに虚勢を張らなくても、ありのままの姿で十分に魅力的ですよ」といって、その人を受け入れてくれる人である。しかし、虚勢を張っている人はむしろそうした人を避ける。虚勢を張っている人同士で結びつくことがある。

そんな場合、お互いに傷つけあっているところがある。しかし、お互いに自分の虚栄心を満たすところがあるので、心の底のどこかで憎みあいながらも、関係をつづける。

お互いに心の底の底ではウソをつき合っていることが分かっている。しかし、それを敢えて意識しない。自分の情緒の成熟にとって本当に必要な人を見分けることは案外むずかしい。だからこそ、人々は時に自分を傷つける人を友人にしたり、恋人にしたりする。

自分が心の底で嫌いな人を、意識の上で好きになっている人は多い。ちょうど親に十分愛されなかった人が、いつまでも親から離れないようなものである。人間の心理は複雑で、その人を心の底で憎んでいるから別れられるなどというものではない。心の底で憎んでいるからこそ、別れられないということもある。