51. 自分の嫌いなことで成功した人は不幸である(『やせる生き方、太る生き方』)

『やせる生き方、太る生き方』より

痩せたいと無理なダイエットをする人も、人から素晴らしいと言われるための体型になるために苦労しているのではないでしょうか。
 
この本の始めのほうにすでに書いたごとく、ダイエットにはほとんどの人が失敗します。ことに自然の体重より痩せようとする努力は失敗します。しかし[もし]ダイエットに成功したらどうなるでしょうか。おそらくこれまた大変不幸になるでしょう。私は三十代のころ、自分の嫌いなことで成功した人は最も不幸であるという趣旨の言葉をどこかで読みました。その通りでしょう。自分の嫌いな分野で成功した人は、いつも自分でない自分を演じていなければならないからです。
 
この言葉はダイエットに成功した人にも当てはまるのではないでしょうか。自分の自然の体重ではなく、自分が無理につくった体重で生きる--それはもしかしたらその人の願う「理想の体重」に近いかもしれません。しかしそれはあくまでも人に見せる体重です。
 
私の父は大学教授でした。当然収入はそれほど多くはありません。にもかかわらず、自分の収入に応じた小さな家が作れませんでした。そのような自分の収入に応じた小さな家に住むことができませんでした。そのような小さな家に住むことを、自分の神経症的自尊心が許さなかったのです。
 
さて太っていることで悩んでいる人は、私の父親の話を読むとどこかおかしいと思うかもしれません。しかし太っていると悩んでいる人も、心理的には同じようなことなのかもしれないのです。つまり私の父親と同じように、成長に伴って解決しなければならない心理的間題を解決できないで大人になってしまったのです。

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