ライオンの皮を着たロバ

ライオンの皮を着たロバが、歩きまわっては、ほかのけものをおどかしていました。すると、キツネを見かけたので、こいつもおどかしてやろうとしました。ところが、キツネは、そのまえにロバがなくのをきいていたものですから、こういいました。
 
「よくおぼえておおき。いままでにおまえのなき声をきいたことがなかったら、私もおまえをこわがっただろう。」

ホームレスは天皇陛下の前でもものを拾う。どんなに着飾っても、日常の生活の習性がふとしたところで表われる。身についたものは良きにつけ、悪きにつけ、消えない。無意識のうちにそれは表われる。
 
どんなに大きなダイヤモンドをつけていても、日頃の鍛練がなければガラスと同じである。かえってみっともない。
 
自信がない人はすぐにライオンの皮を着けたがる。それがダイアモンドであり、地位であり、称号であり、凄い高級車であり、大きな別荘等などである。しかし見る人が見ればそのライオンの皮の後ろに自信のなさがはっきりと見える。だからそれらのものをもっていない人よりもかえってみすぼらしく見えるのである。自分のしている仕事に、生活に自信があればそんなものを無理してまとわない。
 
きちんとした生活をしていないと、それにふさわしくない態度がライオンの皮の後ろからすぐに表われてしまう。ところがこちらがきちんとしたごまかしのない生活をしていないと、相手のライオンの皮の裏にあるものが見えない。それでそのライオンの皮に驚かされてしまう。
 
自分がきちんとしたごまかしのない生活をしていれば怖いものはない。ライオンの皮を誇示されて驚く人は、自分の生活がいいかげんなのである。