20. ほめられると心が落ち着かない人の心理(『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』)

『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』より

自己卑下したり、自責によって自分の価値をたかめようとする人は、正面から他人にほめられると、すぐにそれを拒否しようとする。自己卑下したり、自責を示すのは、他人に対して自分をよく印象づけるためなのに、なぜか正面から他人にほめられると落ち着かなくなる。

他人にほめられると、「いや、それほどでもない・・・・・・」とテレる人が多い。素直に「ありがとう」とはなかなか言えないようである。素直に「ありがとう」と言わないのは、言うと厚かましい人だとか、うぬぼれているとか思われるのではないかと、恐れるからであろう。

自分の服装のセンスをほめられるのを、黙って聞いていられなくて途中で遮ってしまうくせに、他人から批判されることにはひどく敏感に反応する人がいる。他人に正面からほめられると、嬉しくなるよりも不安になってしまうのである。それではほめられることが嬉しくないかというと、嬉しいのである。できれば、いつもほめてもらいたいのである。

このような人と話しているとき、自分について語ることを「真」に受けてはならない。自分のことをけなしたからといって、「ああ、そうなんですか」と言えば、相手は不快になる。自分の美しさを心の底で誇りながら、「私なんか不美人だから」というような言い方をする。自分の語学力を内心得意に思いながら、「僕は英語がうまくしゃべれないので」という。「そんなことないですよ、あなたが下手などと言われたら、上手な人はいなくなっちゃう。」と言ってくれることを期待して、「私は英語が下手だから」と言っているのである。