21. 古い“不幸”の記憶を一掃し、新しい“幸福”をインプットしよう(『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』)

『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』より

自分が生きることを楽しみ、自分が幸せいっぱいになる時、障害になるのはどのようなことであろうか。

それはやはり、小さい頃の体験なのである。小さい頃、たとえば父が病気になった。それでも子供は楽しく遊んでいた。そんな時、母に怒られる。「こんな時になんですか、そんなに笑って」と。

また、世の中には、他人の不幸によってなぐさめられる人がいる。そんな人のなかで小さい頃育ってくると、自分が楽しむことを自分に許せなくなる。そうしたなかで育つと、惨めそうにしていたり、メソメソしていると可愛がってくれた、などという体験を持つことになる。淋しそうにしていると人から愛される、などということを、心の中で覚えてしまう人もいる。

そうなると、なかなか自分が幸せいっぱいになることを、自分に許せなくなる。自分が幸せすぎると妙に気がひけて、何か悪いことをしているような気にさえなる。

大切なのは、そのような古い記憶の一掃である。そして、新しく自分の心の中にインプットするのである。生きることを思い切り楽しむことはよいことだ、幸せいっぱいになることはよいことだ、嬉しい時には思い切り嬉しさを表現することはよいことだ、そして、自分を惨めに見せることで他人の好意を期待するのは止めよう、と自分に約束することである。