28. 日本人は平均的にうつ病的である(『自分の居場所をつくる心理学』)

『自分の居場所をつくる心理学』より

私は日本人というのは平均的に見てうつ病的であると思っている。その一つは我々が何かというと群れるからである。群れているほうが楽しいのである。単に安心するということをとおり越して、そのほうが楽しいのである。
 
他人とかかわりなく自分一人で何かをして満足していられれば、それほど集団の中で生きるのが大事にはならないのではなかろうか。自分一人で気にいった色の部屋にいることで心が満ち足りることができれば、自分の役割にそれほどまでに気分を支配されない。
 
彼らの特徴はさらにまた受け身である。自己中心といい、受け入れられるといい、密着といい、自分の側からはなにも働きかけるということはない。役に立つと言っても他者の期待に答えるということではなかろうか。相手から自分にこうして欲しいと言われることがうれしいのである。自分の方から相手に積極的に働きかけるということはない。
 
おそらく役に立つことがそんなに好調の原因になるのは、それによって自分が皆に受け入れられているという実感が持てるからではなかろうか。つまり通常彼らは、先に述べた自己無価値感のほかに疎外感を持っているのである。役に立つことでその疎外感を克服できる。
 
人は自己無価値感があまりにも深刻になると、他人に利用されることさえ喜ぶようになる。たとえ利用ざれるのであれ、それは人から求められることである。お人好しにもほどがあると言いたくなるが、そんな割にあわない仕事を頼まれて嫌な顔をしないぱかりか、本人はそれを喜んでいる。利用する側は相手を尊敬しているわけではない。扱いやすいと思って適当にお世辞を言っているだけである。

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