27. 多くの大人は自己中心性に深くおかされている(『自分の居場所をつくる心理学』)

『自分の居場所をつくる心理学』より

そしてこの自己中心性は、大人になってもかなりの人に強く残っている。母親が自分の登校の準備を第一にしないと怒り出すのと同じように、奥さんが自分の出勤のことを第一にしないとぷ−っと膨れてしまう夫の何と多いことか。
 
テレフォン人生相談をラジオで始めて全国の奥さんから電話をもらうようになって、日本の御主人の何と多くが自己中心性に深く冒されていることかと私は驚いている。小さな子供が蝉を取ってくる。彼は得意である。それを母親に見せる。それをどうして取ったか母親に話す。彼にとっては大変に興味のあることである。その蝉を取ったことが自分と同じように母親にとっても興味あることでなければ、彼は面白くない。
 
その蝉を取った話を母親がいかにも興味深く聞き入らなければ、子供は面自くない。子供はその話が自分と同じように母親にも興味あるものだと思い込んでいる。子供には蝉のことが母親に同じように興味あるものに違いないとしか思えない。母親が自分と同じ興味を示しながら聞くことを要求する。それが自己中心性である。  しかし同じように、会社の自分の手柄を奥さんに得意になって話す人がいる。そしてその自慢話を、いかにも興味津々に聞かないと、すぐに膨れる夫がいる。自分にとって興味あることは、奥さんにも同じように興味あるはずだと思っている。いや、興味なければけしからんことだと思う。だから奥さんが同じように興味を示さないと、奥さんをけしからんと思うのである。自分と同じように自分の手柄に興味を持つことを当然のことのように奥さんに要求する。

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